ちばやま

ちば山の会2000年7月

千葉市中央区弁天町5番地鶴岡方

Tel・Fax 043-255-9821


雨飾山(あまかざりやま)


2000年5月27日〜28日

 プナの新緑をはじめて見た。残雪の斜面はプナの純林だった。根元の雪は円形に溶けて地表に達している。私は思わず飛び込んで、ふたかかえもある幹に抱きつき耳をつけた。  雨飾山を知ったのは百名山だった。深田久弥氏、久恋の山である。戦前に二度試みて登れず、やっと戦後に登頂している。山の名前もいい。

 私達も深田さんと同じ小谷温泉から入った。メンバーは、橋本さん。柴田さん・竹下さん・中村さん・深山さん・私の6人。小谷温泉を過ぎたあたりから雪が出てきた。キャンプ場は5月の連休過ぎだというのに、まだ雪に閉ざされていた。歩きはじめは、いきなり下りである。大海川の河原に下りる。残雪の河原は雪の下を流れる水が下から雪を溶かしている。下手をすると踏み抜く。我が山の会のメンバーは、たちまち一人落っこちた。
 広い河原にはヤナギの大木が芽を出して、小池にはミズバンョウが咲いている。右岸の急斜面に取り付くとカタクリが咲いていた。「エッ」と思ってあたりを見れば、あっちにもこっちにも咲いている。気がつけばコプシも咲いている。マンサクも咲いている。シラネアオイも見つけた。やがて眼前にブナの世界が広がって、雨飾山の第一楽章はクライマックスに達した。

 第二楽章はアラスゲ沢のトラバースだ。そこはカール状の広い谷。見上げれば『フトンビシ』という岩峰がそそり立ち、雪渓がその間に突き上げている。深田氏はそこを直登したという。
 時折落石が雪渓の上を落ちていく。雪面にトレースが長い。落ちたら一気にもって行かれてしまいそうだ。我が山の会、やっぱリー人滑った。
 第三楽章。稜線に出た。雪の急斜面は風も強い。振り返れば焼山・火打山が見え、見下ろす山ひだは残雪と新緑のまだら模様が美しい。足元に点々と白いつばみがある。たどって行くと花が咲いている。もうハクサンイチゲだ。ここは春も夏も一気に来ている。
 山頂には古い石仏があった。石仏はみな北を向き、その先には日本海があった。
 山々は静かに初夏の出をかなで、居あわせた登山者は完全に酔っていた。

 第四楽章。山の話はおしまい。ここは糸魚川市『フォッサマグナ・ミュージアム』。偶然寄ったこの施設は雨飾山の最終楽章を華麗に飾ってくれた。標本の鉱石や結晶は遥かに人の想像力を超え、まったく神秘的だった。私達は信じられない思いで見つめ、不思議な美しさに圧倒されてしまった。

《糸魚川―静岡構造線? フォッサマグナ? ヒスイ海岸にヒスイ農協?? ナンジャラホイ?》
 地学知識ゼロの我々は『フォッサマグナ・ミュージアム』の看板を見た時、ためらうことなくハンドルを切った。開館時間ももどかしくちょつと早目に入館し「雨飾山の帰りに、千葉から来たんです」と言った。我らが熱意に応え『フォッサマグナ』とはラテン語で『大きな溝』を意味している由、学芸員の方が教えてくれた。
 お勉強して分かったこと。北アルプスはユーラシアプレート東のはじっこにあって、その下に北アメリカプレートがもぐりこみ… …現在も造山活動は続いて…だから山は年々高くなって…?
…なぜだかヒスイが出てきて…?? あれ? …やっぱりワカラン。


                             山崎 修一


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