ちばやま

ちば山の会2001年8月

千葉市中央区弁天町5番地鶴岡方

Tel・Fax 043-255-9821



白馬主稜より、唐松岳縦走


<山行日>4月28日(土)〜4月30日(月)
<メンバー>白井 倉田 (現地にて。飯恤v妻と合流。2日目に別行動)
 猿倉より徒歩で入山。5月1日よりゲートが開くそうだが、いずれにしても徒歩で行くとなるとかなりのロスだ。しかし1時間半ほどで二股に到着し、休憩するが、道を沢沿いに取りすぎて、20分ほどロスする。小屋から尾根沿いに歩き山道に合流する様に歩くようだ。後は迷うことなく白馬尻に到着するが、そこから取り付き部分は、何処でも登れるがトレース沿いに登った。
 いよいよ主稜に取り付くが、いきなり急登で、ピッチが上がらない。しかし不思議とだらだらしたのぼりより楽に感じる。いよいよ八峰の頂上で、登攀具をつける。途中抜かされたパーティーに、美穂さんグループの存在を確認でき、はやくも白馬尻を通過し、このパーティー同様のペースで進行しているようです。彼らは電車できているのに、1時間のアドバンテージなぞ、巨人軍に1点勝っているようにたやすく抜かされてしまうと実感。トレーニングが足らん様だ。

 そんなことよりいよいよナイフリッジ。とても雪がゆるく、危険な状態であった。ちょっとばて気味で集中力も無く、不用意にトラバースに足を伸ばしたそのとき!緩くなったトレースは簡単に崩れ落ちてしまいました。滑ったと思ったと同時に体をひねるがやはり横向きになるのが限度で、うつぶせの滑落停止姿勢にはならず、しかし足は開いて腐った雪に抵抗になるように体は反応していて、倒れた瞬間止まるかと思ったが滑り出したので、あわててピックを不十分ながら突き刺すと、とまった。2から3メータ位の出来事だが、止まらなければ下の潅木までは落ちただろう。怪我をしたかもしてない。春山独特の危険である。雪が少なく思いのほか緩いと、全然支持力が無く突然崩れる。兎に角気を取り直して進むが、雪がとても疑わしくなると歩くのにも腰が引けて、余計危ない。正直、うわさで聞く白馬主稜は、入門ルートだし、ザイルを出さないのが普通といった感じのルートで、それほどのナイフリッジもないと思っていたが、思いっきりナイフになっていた。剣八つ峰のものすごいナイフほどではないにしろ、それに近い雪の緩さ、傾斜、やらしさ、を持っており、正直帰りたくなってきました。しかしもうそこは帰ることのできない、帰る技術が非常に難しい場所であり、どんなことがあっても最後まで登り詰めなくてはならない。
次々と出て来る剥がれ落ちかけている雪を、右に越し、左に逃げ、はたまたま急斜面に対して垂直方向に切れたクレバスの中を歩いてトラバースするような、避けるに避けられない場合や、ザイルを出そうにも不安定な場所過ぎて、余計危険というような、リスクに慣れてしまった状態だった。山登りにおいて、こういったことは日常茶飯事で、どう考えても矛盾であるとも言える。雪崩の判断を仮にすることができたとしても、さらに大きい危険を犯して撤退することは考えられない。多少やばくても、歩いて早く抜けちゃった方が安全といった感覚になる。こうなってくると、雪崩れそうでも雪崩れなさそうでももう突っ込んでいくことしか考えなくなる。とても疲労しているが、アドレナリンが出ているのでがむしゃらに進む。こういうときの気持ちはなんともいえない心臓を圧迫されるような感じだ。ひとつ峰を越えるたびに、もうやばいのは止めてくれと願いながら進む。
 夕方近くになってくるとどうも越えられないような感じになってきて、3峰までには何とか行きたいとかなり無理して進む。途中飯恤v妻がいい天場を見つけたのでそこに張るといって分かれることになった。我々は何とか不帰を越えるのを実現したかったので、くたくたになりながらも進み、段段と締まってきた雪で歩きやすくなったので、やばいところも比較的楽に抜けられた。
 天場を作り、ようやく落ち着くことが出来た。ばてた。疲れた。明日の核心が気になるが、とにかく一安心で、シーフードテグタンやら、コーヒーやらいろいろ食べたり飲んだり。しかし1〜2人用は狭い。一人で動くと必ず何かにぶつかるので、いっしょに動くようにしないとだめです。とにかく明日の3時起きに備え早く寝た。
 いよいよ核心への登りで、がちがちの硬いうちに上ってしまいたいので早く出たかったが、やはり6時になってしまった。2峰を目指してぐんぐん登る。1峰の核心は何処なのか良くわからない。先行パーティーはもう出てまして、ずいぶん急そうなところを登っている。まだ2峰で核心ぢゃないなと思いながら、まだやばいところがあるのかなと思った。小さなテラスのようなところの後に、凄く急な感じの斜面があり、しかし雪がしまってるのと、登ってみるとそんなに急でなく、ぐわしぐわしといった感じで昨日どうり、アドレナリンで登った。さあ、いよいよ核心が見えるか!とのっこすと、ずいぶん広いところに出た。2峰ってこんなに広いのか。祠まであるよ。まるで頂上のように、展望用の石碑まで…。ギョエー。山頂じゃないか!!1時間もかからなかったヨ。しかしこの驚くべきギャップには凄いものがある。ほんとに頂上突き上げである。いつもクライミングをしてて求めているようなルートです。山頂の碑でビレイするのもここでは可能である。
 白井さんもすぐにやってきて、厚い握手を交わし、白馬小屋へ行きビールを飲んだ。暫く平和が続く。しかし不帰を抜けるには時間があまり無いので、ガンガン進むしかなかった。雷鳥に追われつ、疲れの抜けきらない体に鞭打って、時間ぎりぎりのところで、天狗の大くだりを抜け、いよいよ不帰キレットの基部に着いた。まったく登るところの無ささそうなところだ。時間2時半。3時間行程(夏)のコースなのでどう見てもぎりぎり。下手すると暗くなる。危険地帯は抜けるのにそんなにかからないはずなので、突っ込むことしか考えなかった。白井さんも了解してくれた。しかし、先行パーティーがザイルを出しだしたので考えが一気に暗くなった。抜けたアドレナリンをもう一度噴射させて、気合を入れなおす。見るからに悪そうなとこだ。ガンガン登って、ビレイをしていたらしかったところにつくが、見た目はとても簡単。然し何時剥がれるとも知れない雪なのでビレイしたんだろう。
我我もビレイしていくが、ザイルが足らず、ビレイを解除してもらって、岩場でビレイ。やばい所だが、すばやく抜けて、次へ行く。時々前のパーティーの、ザイルワークの掛け声が聞こえてくるので、まだザイルが必要なようだ。暫く行くと、いかにもビレイしてましたといった感じの足跡が出てきた。然しどうも見てもこの場所でビレイすると、いちばん危険なとこれでピッチをきることになる。ビレイ無しでいくか、と行きかけたが物凄い切れている。落ちたら最後である。やはり白井さんの一言で、デッドマンでなるべく近くへ行き、少なくともいちばんの危険地帯を避け、出来れば潅木にビレイを取りたいところだ。それにしても切れていて、雪もゆるく、まさにアドレナリン大放出です。何も考えずに、ピッケルをグサグさ刺しまくる。かなりゆるいが、美穂さんが切ったと思われるとレースをガンガンけりこみ進む。何時崩れてもおかしくない。全然おかしくない。と思いつつ危険地帯を抜けた。
ほっとすると、ザイルいっぱいの声。仕方ないここでビレイ。潅木からとろうかと岩場に近づくが、岩の近くがいちばんやばかった。下まですっぽり何も無い。諦めてここでもデッドマン。然し70度ほどの雪では、デッドマンをどういう角度でさしても変で、斜面に垂直にすると、ワイヤーが深くなりすぎて、溝を掘るとものすごい下まで掘る事になってしまう。鉛直に近くすると雪の厚みが無さ過ぎる。仕方なくそれなりに埋めるしかなかったが。まさに暗示に近い。抜けないと思いこませるだけである。落ちた時の荷重方向をよくイメージして、体でとめるしかないと思いました。幸い白井さんは落ちることなく通過してくれたので、助かりました。ここで墜落したら、ものすごい光景だろうな。然し、止める事さえ出来れば何とかなるという自信はありました。そのまま白井さんにリードしてもらい、潅木の間を通過。然し意外とそこが悪いようで再び緊張、潅木でランニングを取ってもらえばよかった。いずれにしても無事通過。おそらく3峰と思われるところで休憩 4:30で、何とかたどり着けそうな気がしてきました。後はひたすら歩くのみ。完全に体力の限界を超えていたが、歩くしかないので歩いて歩いて何とか唐松山頂に。やった、というかなんというか、全身の力が抜け、少し気持ち悪くなってきました。すぐに白井さんも登場。これほどの感動は無いと、白井さんも私も全て出しきった満足感でいっぱいでした。2日間連日6時から日暮れまで歩きどうしで、かつ緊張しっぱなしで、今回は白井さんと二人という実力も経験も浅いもの同士だったので、とてもプレッシャーが強く、くたびれました。もー、くたくた。でもどうしてくたくたで終わると満足感があるんだろう??

                         倉田 洋二

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