針の木雪渓・飯豊石転び雪渓山スキー

日程 : 2003年5月24日・25日
メンバー : 菊池(CL)、三輪(SL)小倉(時)、小倉(笑)、舟山
 前年6月始めの飯豊石転び山行に参加し、この雪渓の山スキーを実現したいという気持ちが益々自分の中で広がっていった。インターネットで地元の飯豊登山情報を毎週チェックすると、今年はデブリがかなり多く、落石なども懸念される。当初、石転びと門内雪渓の両方を連日攻めようと欲張った気持ちを抱いたが、千葉からのアプローチがあまりにも長い。日程が近づくにつれ、日頃の慌しい中この計画を実現するにはかなりのプレッシャーを感じるとともにエネルギーが要求された。メンバーの足並みはまあまあ揃っているが、なにしろ落石・急斜面の滑落など心配すればするほどプレッシャーを感じていた。

 結局アプローチが楽になるように門内は諦め、1日目は比較的短時間のコースで2年前経験済みの北アルプスの針の木雪渓を選んだ。2日目は何と延々と北陸道をぶっ飛ばし新潟を通過、飯豊山登山口の飯豊山荘の駐車場に夜10時近くに到着するという、我ながら実に馬鹿で奇抜な計画を練ったものだ。しかし計画段階のプレッシャーを跳ね飛ばすような天候に恵まれ、またメンバーの足並みも揃い、素晴らしい二つの大雪渓山スキーを堪能でき、長い帰路の疲れも感じさせないような充実感を味わえた。

 このような行動範囲が広く大胆な計画は初めてで最後かも知れない。単独では無理である。小倉車の提供なくしては実現できず、またメンバーに恵まれ最高のちば山・山スキーツアーであった。

 昨年は私が計画する山スキー山行が多く、計画を練り連絡をとりあうことにエネルギーを使い、充実したツアーが終了すると山行記録を作成する意欲もなくなってしまった。なんとか記録に残しておきたいとずっと心残りであり、翌年のGWにこうしてしたためている。

5月24日:扇沢−堰堤右岸−雪渓末端−針の木峠−滑降

 扇沢の駐車場からザックにスキーを付け、担いで出発、木がスキーに引っかかりややうるさい。しばらくすすむと右岸の堰堤越しに雪が繋がっている。ここからシール登行を開始した。積雪が多かったせいか、デブリがかなり多い。明るく広い雪渓を進むと徐々に斜度が増し右にさらに急なヤマクボ沢のカールへの分岐に達した(前回はヤマクボ沢をつめ登頂した。)ここでアイゼン登行に切り替えた。

 最大斜度30度ほどの急斜面をピッケルを使いながら一歩一歩ステップを辿るとやがて針の木峠(2770m)に到達した。先行の山スキーヤーが数名いたが、つぎからつぎへと登ってくる。時間も十分あり、三輪さん、舟山さんと山小屋脇から裏側の35度強の急斜面を標高差150mばかりくだった。滑走は快適であったがスキーを肩に担いでの上り返しがかなりきつく、緊張させられた。

 しばしの休憩をとり、いよいよ針の木雪渓の滑降である。滑り出しは30度強の大斜面であるが、雪の状態が良く恐怖心はないようで、夫々思い思いのコース取りで高度を下げた。ヤマクボ沢の分岐から下は斜度は緩み、デブリが多いものの、斜面を選んで快適な滑走ができた。標高差約1200mあまりの滑降であり、雪渓の山スキーとしては中級者以下でも手軽に楽しめる安全なコースである。次回は是非ヤマクボカールをつめて山頂より滑降したいものだ。

     


5月25日:飯豊山荘−温身平−雪渓末端−石転び出会(門内沢分岐)−石転び雪渓−梅花皮山荘−滑降

 前日、針の木雪渓を滑り、糸魚川に向かう途中、道の駅の温泉で疲れをとってから北陸道を経由、日本海を眺めながら米山Pで夕食をとり、なんと延々300km余りで、飯豊登山口(417m)の飯豊山荘駐車場に着いたのが9時半を過ぎていた。本日の長丁場を考え早朝発とした。温身平を経て1時間半ほどで雪渓末端((720m位)に達した。シールを着け、いざ雪渓登行に気合をいれた。情報通りデブリが多く、ところどころ大きく波を打っており、コース取りを考える箇所が多い。今回は断念した門内沢が正面に見えるが、黒ずんだデブリがかなり多く見えるが十分滑降できる状態のようで、次回はきっと詰めてみたい。間もなく石転びの出会いに達し、豪快な石転び雪渓が稜線に向かってせりあがっている。やはり、苦労をしてでもきてよかったと、一同歓喜の声をあげ、雪渓をバックに記念写真を撮った。前年より時期も早く、雪の量が多く前年より更に豪快な景観である。この雪渓を一歩一歩登って行くのだと自然に気合がはいった。

 しばらくすすむと、雪渓上にトレースを長く引きずった大きな落石が所々にみられる。先行パーティの「ラークラーク」の掛け声が聞こえる。そのうち左の崖から石とともに落ちてきた大きな雪のブロックが舟山さんをかすめていった。正に「石転び」である。左右の山に目を配り慎重に登行した。いよい梅花皮山荘の建つ稜線に向かう40度位の急斜面が待っている。前年はザックの重量が重くへとへと状態で草付を通過し、一部トラバースでやや緊張したが、今回は重量が軽いこともあるが、アイゼンを着けステップを忠実に辿り直登すると意外に楽であった。順調に稜線(1858m)に到達、早速缶ビールを雪で冷やし乾杯。最高の気分であった。

 滑降は登りで確かめたクレパスを避けるようにコース取りをした。状態の良いザラメ雪のため、急斜面も快適な滑走で高度を下げた。思い思いのシュプールを描き、止まっては滑ってきた豪快な斜面を何度も何度も仰ぎ見ながら出会いまで滑ってきた。この先雪渓は右に曲がってフィナーレを迎える。雄大な石転び雪渓をもう一度目に焼き付けてから出会いを後にした。雪渓を離れ、登山道を歩く道すがら、カタクリの花を楽しみ、ブナの大木と新緑を眺めながら、2日間の楽しく充実した大雪渓山スキーの余韻に浸った。