黒姫山山スキー経過報告

メンバー Y氏(SL)(27)、U氏(代行CL(32)N(31)I(30)、舟山孝(46)

(高松信博(CL)(28) (記)、I女氏(30))←途中離脱

概要;

1)日程及び天候;2/7(土)(くもり時々雪)日帰り 同日福井県で関西学院大WV部遭難事件あり

2)概要

 今回の山行ではリフトでのI女氏の怪我、その診療付き添いによるCL高松の不在、及び重い雪、及びルートミスにより下山が遅れ(1840到着)、スキー場パトロールの圧雪車の手助けを借りる自体となった。幸いI女氏の怪我は問題なく、全員怪我なく下山できたが、以後同様のトラブルがないように、CL高松の行動について記す。また、U氏によるスキー隊の行動も記す。

3)時間

915  第1クワッドリフト乗車

9:30   I女氏負傷、高松、I女氏離脱

11:30  眼科で診療

14:40  高松、I女氏再入山(旧ゲレンデのみ)

16:20 高松、I女氏下山

16:24  Y氏から第1報(1100m付近)

17:17  Y氏から第2報(1000m付近)

17:59  Y氏から第3報(林道付近)

18:40  全員無事下山(パトロールセンター)

4)概念図






詳細;

前夜20:50に市原を出発し、アクアライン経由で羽田空港でI女氏をピックアップし、上信越道経由で道の駅しなのに向かい、テント、車中で仮眠した。(210着)(高松、I女氏、舟山氏、K氏同乗)

6:30に起床し、朝食の後黒姫高原スキー場に7:50に到着。他のメンバーの到着を待つ。8:40N氏到着。8:50I車到着(I氏、U氏、Y氏同乗)。準備の後、9:15に第1クワッドリフトに乗り込む。第2ペアリフトに乗ろうとするが、まだ、動いていな:いため、リフト前でシールの取り付けを行う。この際I女氏はスノーシューを装着し、スノーボードを抱え込みリフトにのる。リフトが動き出したため、準備の出来た順にI女氏からリフトに乗り込む。リフトを降りる際にI女氏がスノーシューのためつまずき、抱えていたスノーボードで左目内部切傷、及び目の下部に擦り傷する。後から着いた高松が気づき、血も出ていたため、ティッシュペーパーで止血した。血はすぐに止まったが、リフト係員の指示で、パトロールを待つ。パトロールは到着した(9:30ごろ)が、特に処置は出来ず、鏡で本人に傷口を見てもらい、とりあえず、レストハウス付近のパトロールセンターに行くように指示される。血も止まったため、高松が付き添いし、自力でパトロールセンターに向かうこととする。このためCL不在となったため、U氏にCL代行をお願いし、Y氏(SL)、U氏(代行CL)、N氏、I氏、舟山氏は予定通り、入山することとする。入山の際には他に10名ほど他パーティもおり、トレースを作っていること及び、U氏、舟山氏が一度入山経験があることから特に心配はしていなかった。

パトロールセンターに到着後、駐在者にみてもらうが目の内部なので医者に行くように薦められ、長野市内の眼科を紹介される。特に処置はされず、袋をもらい患部を冷やすだけした。パトロールの処置は事務的で、後は事情聴取をされただけ。眼科が12:00までであることから事情聴取の詳細は断り、高松車で眼科に向かう。11:30眼科到着、診療を行う。左目内部切傷は縫う必要なしと判断され、視力も変化ないことから、軟膏のみをもらいスキー場に戻ることにする。途中昼食ののち、再びリフト2基乗り継ぎ、リフトが止まっている旧ゲレンデだけという条件でシール登行を始める(14:40)。15:35旧ゲレンデ最上部到着。シールを外し、I女氏はスノーボードに履き替え、滑走を開始する(15:45)。重く深い雪のため、I女氏は思うように進めず、何度かサポートの後、第2ペアリフト降り場に到着(16:20)。  この際、朝見たパーティーと思われる山スキーヤー10名ほど、ボーダー5名ほどが山から現れ、次々に滑って行った。U氏たちがこの人たちと同じトレースを使っていたと推測する。この人たちは元々ゲレンデに降りる計画だった?。

ゲレンデを下降し、レストハウスに向かう途中、Y氏から第1報(16:24)。現在予定の1100m付近に到着。雪が深いため思うように進めず、シールを再び張りゲレンデに向かっているとのこと。多少遅れるが全員元気で心配はしないようにとのこと。そこでレストハウスに向かい、I女氏はK氏(今回ゲレンデのみで参加)と合流しレストハウスで待機する。高松はスキー隊がゲレンデに戻る地点である前山第3ペア中ほど付近で待つことにする(16:30)。リフト終了時刻であり、日も暮れていることから心配する。リフト終了の音楽が鳴り、パトロール1が来る。パトロール1に、圧雪車が入ることからゲレンデを去るように指示されるが、仲間が入山中であることを説明し、もう少しで来るから圧雪車を待ってくれるように言う。また、携帯で繋がるなら圧雪車に気をつけるように連絡するように言われ、Y氏に連絡するが、圏外で繋がらず、I氏の携帯の留守電にその旨を入れる。パトロール1は了解し、他のゲレンデ(第3ペア付近は一番端であることから初めに圧雪をかけたかったらしい)から圧雪するように無線連絡する。この際パトロール本部にも連絡が行き、パトロールの方でも遭難等の対策を考えたようである。パトロール1が去ったのち、高松氏はI女氏に連絡、レストハウス待機を指示し、最悪の事態を想定するようにと、連絡先になるように指示する。数分後、責任者らしいパトロール2が到着(後で怒られた方)、いろいろ事情聴取される。事情聴取中、Y氏から第2報(17:17)が入り、現在地が先ほどと間違っており、ゲレンデ北側(計画ではゲレンデ南側の予定であった)の林道上部1000m付近であると報告がある。同時に聞いていたパトロールからとりあえず、パトロールセンターに来るように言われる。レストハウスに戻り、I氏、K氏を伴い、パトロールセンターに向かう。パトロールセンターで事情聴取され、遭難者名、推定現在地、装備を聞かれる。パトロールでは林道と聞いたことから、最近の降雪状況(昨夜30cm、一昨日50cm‥と大量に降っている)ことから歩行は時間がかかると判断し、日も暮れることからゲレンデにライト?(ナイター?)をつけ、圧雪車、スノーモービルを林道に派遣する。17:59Y氏から第3報、「林道を歩行中で、まだ1時間くらいかかりそう。ご飯どうする」とのこと。圧雪車、スノーモービルが向かっていることを告げ、明かりが見えるか言うとゲレンデの明かりが見えるというのでそのまま進むように言う。状況をパトロールに言うと無線連絡し、程なくパトロールに発見された。(見つけられた際に怒られたらしい)その後、林道は圧雪されていたため滑って来られ、パトロールセンターに到着した (18:40ごろ) 。パトロールセンターで再びひどく怒られた後、宿に向かうことにした。全員怪我なく、無事下山終了。

U氏からのスキー隊行動詳細)

今回そもそもの間違いは、稜線で、ニセピークを黒姫本峰と勘違いしてしまったことですが、滑降ルートは真東にとったので、今見ると、ちょうどスキー場へ戻る尾根上を滑っていました。他パーティも一緒で、その点も安心でした。しかし、尾根が緩やかになってきたところで、重雪を嫌って、左の沢に入ってしまいました。沢に入る前に一旦読図を行っています。ここで、もし、スキー場へ戻る尾根の地形が頭に入っていれば、「現在地はここだ」と簡単に修正できたはずです。視界は悪かったものの、難しい読図ではないし、現実に他パーティはそれが出来ています。しかし先の通り、地図の東斜面しか見てなかったため「(東斜面がこの標高で)何となく緩やかになっているかも」と都合よく解釈してしまいました。沢沿いに入ってしばらく行くと、次第に方角が北向きになり、斜度も緩やかすぎ、さらに左手に見えるはずのリフトも見えないので、頭の中に常に疑問符がある状態になりました。この時、万が一の事を考え始めていました。時間を節約するために、先行してトレースをつけようと1人フル稼働してました。予想外の林道に出た時、これ以上下るのはヤバイと思い、林道を300mほど歩いて視界の利くところに行き、そしてスキー場が全く見えなかったので、万が一の事態に陥っていることが分かりました。ここでじっくりと読図して、ようやく現在地が確認できました。林道はスキー場まで2kmの地点。緩やかな下りですが、ラッセルで日が暮れるの避けられない状態で、やはり日が暮れてしまいました。雪上車が迎えにきてくれたのは、林道が深い沢で大きく屈曲している地点、残り1kmほどの地点でした。もし迎えに来てくれなければ、あと40分かかっていたと思います。

反省点

CL;高松)

(代行CLU氏)

(舟山氏)

1.行動時間について

別パ−ティーもそうでしたが、遅くとも1:00には、下降すべきと思った。意見を求められても、言えなかったのだから何の意味もないが。年齢に関係なく日は暮れる。焦るとすべての判断を誤る原因となる。

2.入山経験について

個人の山行レベルの違いで、同じ経験から得られる情報に差が生じる。登りで途中 ポイントを確認する時間を確保できなかった。高度計も合わせずじまいだった。疲労の程度とは関係なく、主体的に自分のポイントを確認する時間をとる努力をすべきであった。解らなければ解らないなりに リ−ダーに聞いても良かったのでは。そういう行動があれば、ほんの少しの入山経験でも役に立つ時がある。滑降時には、着いていくのが精一杯であった。

3.リフト乗車について

他のスキー場では、板を付けてないとリフトに乗せないところがある。スノーシューでリフトに乗るのは、意味がない。靴のままで良い。

SLY氏)

−問題点−

1.リーダ頼みとなっていた点

2.高度計を鵜呑みにしすぎていた点

3.体力不足が、判断面に影響していた点

4.事前の情報頼りとなっていた点

5.年間を通して経験不足

−詳細−

1.については、SL指名を受け、出発前に十分認識していたものの、黒姫経験者の判断を鵜呑みにしていました。リーダには総合的に判断してもらうために、SLの役目として率先してルート偵察などをするべきであったが、体力のあるUさんに頼りっぱなしだった。また、登りのルートを他パーティに任せるあまり滑り初めのスタート地点を北側に誤り、確信をもってそこから東に滑り始めたため、リカバリする間もなく、快適な斜面がある沢に入ってしまった。谷を下っている最中読図をした際には、当初の沢にある二股出会いが明瞭ではないこと、リフトが見えない時点でおかしな気がしていたが、そこで疑問をはっきり口にしなかった。

2.については、スタート地点が誤った要員の一つだと思う。高度計はこのとき、1995m付近を指していた。スキー場登り初めにNさんと僕の高度計を合わせて以後事あるごとにチェックしていったが、悪天候で気圧が変わる中、高度計の誤差が推定で数十mは出てしまっていた。容易に鵜呑みにしてはいけないことを改めて痛感した。(実際に翌日の飯綱でも、天候は安定したが、やはり最大30m程度はずれてしまっていた。)

3.については、体力のなさから他パーティと共同でラッセルしてしまっていた。ルートが北に寄っている点で、軌道修正しようと思えばできたと思えるが、他パーティが、ガイド山行ということもあり、お任せにしてしまった。実際に他パーティのひとつは、南に軌道修正をしていた。

4.池田の一昨年、高松の昨年の素晴らしい山という、事前の情報を鵜呑みにしていた。あのあたりの山は長野方面と違いドカ雪になりやすいことを肝に命ずるべきだった。(そういえば、成功した山はだいたい天気が良いもしくは天気がもっていた)。あたりまえのことだが、悪天候時は引き返すことを優先すべきと痛感した。これについては、リーダは大体においてメンバに良い滑りを味合わせたい思いがあるため、SLとなった際は無理しても引き返すことを考えたほうがよい。

5.いわずもがな。

次回以降に備えて、もっとメンタル面、フィジカル面のトレーニングをしないといけない。山に行こう!と言われた時に、自信を持って任せてといえるように準備します。

N氏)

Nです。遅くなりましたけど、皆さんお疲れさまでした。あと皆さんが発信されたメールを興味深く読んでいました。ほんと、おっしゃるとおりで、僕なんかより深く物事を掘り下げて考察されていて参考になりました。ありがとうございます。その上で僕が考えたことを書きたいと思います。まず、冬山ということはこういうものだということです。今回参加したメンバーの中で 学生時代冬山経験者はA女氏と僕だけです(舟山さんごめんなさい、内輪の話です)。今回の原因には様々なものがあり、これじゃん!とはいえない。逆に言えば、正しくルートを判断していても、ラッセルがなくても、僕が遅刻しなくても、こういう状況にいくらでもなりうるということです。また、スキーは機動力に優れすぎているので、冬山の時間の流れに気がつく機会が少ないと思います。歩けばわかりますが、ただ歩くという行為だけでも、夏の数倍の時間がかかります(当然それ以上の勢いで体力は奪われていきます)。なおかつ、日が暮れるのは2時間以上早い。夜明けも遅いんです。つまり、1日の内で人間にとって極度に低温な状態のほうがずっと長い。それに加えて、健康な状態を維持しながら夜を過ごすのに必要な準備をするには、想像以上の労力と時間がいるのです。筑波大学WVクラブ冬山研究班(以下冬研と略す)ではそういうことを3年間勉強し、実際に冬山で実践してきました。そうなってしまった場合に、じゃあどうすればより無事に戻ってこれるのかということも勉強していました。冬研参加者がエライっていってるんじゃないです。冬山に入る以上、機会と義務は均等です。ゲレンデの延長の山スキーだろうがなんだろうが、冬山の中にいる人間すべてに、同じ条件で不測の事態はやってきます。当然それに対抗できる「力」も、皆均等にもっていなければならないと思います。冬研参加者がエライわけではないということは、言い換えれば全員が冬研参加者くらいのことは、知識経験体験ともに積んでおいて当然ということです。今回みたいなラッキーが積み重なったような事態以上のことが起こった場合には、さらに深刻な結末になるでしょう。以上の長文の意味なんですが、どんなに避けようとしていても、今回のようなことは起こりうるといいたかったのです。それを踏まえて、またみんなで冬山で遊びましょう。

I女氏)

私の反省としては、黒姫山の山行自体には参加していないので、私自身の転倒事故に関してということになるのですが、やはり経験不足が一番の原因といえると思います。山スキーの経験がほとんど無い上に、一人だけスノーボードということもあり、初めから遅れをとらないように、との焦りがあったのだと思います。全くもって初歩的なミスであります。山スキーだけでなくどんな山行でも、冷静に判断して行動できるようにならないといけないですね。