自然派スキーのすすめ
               2002年10月23日(水) 菊池

・自然派スキーとは;リフトやゴンドラを利用し整備されたコースを滑降するゲレンデスキーに対して、戦場ヶ原・光徳牧場、北八ヶ岳などのスノーハイク、妙高周辺・神楽などの深雪ブナ林滑降、八甲田・八幡平の樹氷ツアー、巻機山・立山・双六・雪倉岳・飯豊などの残雪期ツアー・針の木雪渓・富士山滑降など11月下旬から6月中旬までそれぞれの旬の時期を選んでスキーで自然を楽しむことを自然派スキーといいます。山と雪とスキーが好きであればそれぞれの技術に応じて楽しめます。

スキーで滑降するだけが楽しいのではなく、シールをつけての登高・ステップソール(登りで滑らないようにソールにステップがきざんである)での林間や丘のツアーも楽しいものであり、登りは踵が上がるビンディングを使用します。


  
・自然派スキーを楽しみましょう! スキー初心者でも戦場ヶ原・北八ヶ岳スノーハィキングはすぐにでも楽しめます。ゲレンデスキーの技術をある程度持ち合わせている人は残雪期ツアーから始めましょう.ゲレンデ・ゲレンデ脇の新雪エリアで練習し技術を磨き、深雪滑降に挑戦したり、北アルプスの山岳スキーを楽しみましょう。

・自然を相手にするため、気象条件・雪の知識(雪崩れ、雪質と滑りやすさ・滑降技術など)を勉強し、実践で体得していきましょう。

  

・スキー発祥の地;スカンディナビア半島;アルプスに比べ緩やかな地形のため、スキーは最後まで歩行用具としての機能を保ったまま発展した。
 cf:ノルディクスキー;クロスカントリー、ジャンプ、テレマーク
           踵の上がるビンディングを仕様
・アルペンスキー;ヨーロッパ大陸に伝わるとその急峻なアルプス地形を地形を滑り降りることを目的に用具や技術の改良がなされ、ダウンヒルスキーとしての道を辿った。

・用語・用具説明

・山スキー:アルペン式山スキー・テレマークスキー

・バックカントリースキーツアー、オフピステ(vsピステ・ゲレンデ)

・シール:アルペン式、テレマークとも雪山登高のときに、滑走面に貼り滑らないようにする。材質は昔はアザラシの皮、現在はモへヤかナイロン。滑降のときに外す。

・ステップソール:クロスカントリーやテレマークの滑走面をうろこ状にカットし、登りを滑らないようにしてあるもの。

・ビンディング:アルペン用は登りでは、踵があがり、滑降時は踵を固定する。テレマーク用はケーブル式、3ピン式などいずれも常に踵はあがりシンプル

・スキー靴:
  アルペン式;歩行時に足首の角度が可動式になる兼用靴(プラスチック)がよい(滑降時には足首の
  角度は固定)
  テレマーク:つま先部分がビンディングに固定され足指の付け根部分で曲がる。
  皮とプラスチック(歩行時に足首の角度が可動式)。皮は歩行性に優れ、プラスチックは滑降性に優
  れている。
・スキー板:悪雪・深雪対応など種々の仕様がある。目的に応じて選択。

・アルペン式山スキー

従来の兼用靴・ビンディングは重かったがかなり改良され軽量化されている。急斜面・ハードなアイスバーンなどには対応できる。エキストリームスキーなどを行う若者もいる。つま先の一点固定のため歩行・登りがロボット的になる。慣れないと疲れやすく急斜面でのキックターンでバランスをくずしやすい。

・テレマークスキーの再興
アルペン式山スキーへの疑問;ギブスのように足首を固定するプラスチックブーツ、踵の上がらない重いビンディング、幅広く重いスキー、山々をあるき回るツアースキーにとっては、好ましくない機能ばかりである。クロスカントリースキーの見直しと全世界への広まり。コロラド州の5人のスキーヤーが100年前のモルゲダール技術を掘り起こした.彼らのひとり、リック・ボーコベックは、スタイン・エリクセンの本「カム・スキー・ウィズミー」のなかにあった、エリクセンの父が滑っているテレマークの写真からインスピレーションを与えられ、これがテレマーク再興の直接のきっかけとなった。彼らはこの技術の実用性の高さに注目、テレマークターンは瞬く間にアメリカ全土に広がった。XCヘビーツーリング用が出発点であったが、滑降技術の追求がすすむにつれ用具も進歩した。歴史に再登場して約30年を経たモダンテレマークはXCから出発し、アルペン的要素を取り入れながらさまざまな方向に発展してきた、独立したスキージャンルとみなすことができる。

・テレマーク的発想法(利点)
「心地よさ」、アンチロボット的スキー、シンプル(素朴)な用具:テレマーカ―自身の自由な感覚を充分に残した状態で、用具と身体の一体化した動きを目指すことができる。足の動きを束縛しない、軽量のため歩行登高に極めて有利である。関節の動きを殺さず、無駄な力を逃がすスキー操作であり、ひざを深く曲げた姿勢をとることによって重心を下げ、バランスをとることができる。これは、新雪や悪雪を滑る機会の多いスキー登山では大きな利点である。

・ウエア
冬のレイヤード                     春のレイヤード
  
・コンパス・ショベル・ビーコン(練習しておく)・赤旗:ツアーでは必携

・アイゼン・ピッケル:北アルプスなどの高山のツアーや、ピークハントするときに、スキーを使えないアイスバーンや急斜面、ナイフエッジが登場する.行動中一箇所でも予想される場合は持参する。アイゼンは前爪のある10本か12本。

・非常用品・リペアー用品;ツェルト、ヘッドランプ(日帰りツアーでも)、電池、針金、小型ペンチ、ナイフ、ガムテープ、ファーストエイドキット

・ツアーに必要なスキー技術の基礎(できるだけ練習をつむこと)と練習
 平地歩行、直滑降、ボーゲン、斜滑降、キックターン、横滑り、山回りターン、谷回りターン
 (パラレル)、シュテムターンジャンプターン:悪雪、急斜面に適
 新雪・深雪ターンはゲレンデ脇で繰り返し練習し実践に備える。寒波で雪が降り続いている時は、練
 習の最適時である。こもってなくセッセと新雪練習してください。極楽パウダー深雪滑降ができるようになりますよ。

・雪質
名称解説
パウダー降った直後の軽いパウダースノーはターンしやすい。パウダーを目指し標高・地域を考慮する。
クラスト表面が日に当たった後に冷えて硬くなった雪質で、横ずれしにくいため、回転しにくい。
新雪降った直後が最も滑りやすいが、日が当たり冷えると表面がクラストし回転しにくい。林間ではパウダーの状態が保たれやすい。
もなか表面のみクラストし中が軟らかい状態で、手におえない。
シュカブラ風が強い地形では、新雪でも風により積もり方にむらができ滑りにくい。
パック新雪でも風がつよかったり、日があたることにより、密度が濃くなりパックされたような状態となり、ターンしにくい。
ザラメ残雪期に表面がザラメ状になり、滑りやすく初心者でも快適なターンができる。気温が上がりすぎると堆積するため重くすべりにくくなる。
フィルムクラストザラメの表面が溶けてその後、フィルム状に薄くクラストした状態であり、山頂近くでできやすく、極めてすべり心地がよい。
スノーシャワー深いパウダースノーの滑降で、極上の軽いパウダーを顔面に浴びること。極楽スーキーの極めつきである。寒波時の神楽のブナ林で膝上深雪滑降時に経験できる。悪雪・腐れ雪:3月ころの重い新雪が積もった後に気温が上昇すると、湿った重く深い腐れ状態の雪が堆積している。さらにこの状態でクラストしたり、凍った状態になると更に最悪の状態となる。


・各エリアの旬の時期を選んでコースを選定する。
11月下旬:立山、新雪滑降(適度な新雪)
12,1月:ゲレンデ練習、神楽などゲレンデからのショートツアー、1月は厳冬期のためツアーは1500m以下が適。
2,3月:八甲田、八幡平樹氷ツアー、根子岳、安達太良山;初心者も可能。
3月には天気も安定し1500−2000mの山(上越、妙高近辺)が適期となる。
3月中旬以降は雪崩れの多発時期になるため、コース選定・天候の把握が重要。 4月:残雪期で雪が締まり、安定した時期となり各地でツアーに適したコースが選定できるが、沢コースなどは雪崩れに注意。
5月:標高の高い山域(白馬周辺、立山、乗鞍)、雪渓(白馬、針の木、飯豊)、残雪の多い山域(月山)、富士山 下りが滑降により夏山よりかなり短縮できるため、残雪期は夏山の1泊2日コースでも日帰りが可能となるコースが多い。標高差1300-1500mの滑降が可能。 天候が崩れる可能性があったり、初心者が多いツアーは標高差が少ないピストンコースを選ぶ。 雪が氷化している時間帯の行動は避ける。

・山スキーの危険性をできるだけ避ける。
雪崩れ;無木立、急斜面・急斜面のトラバース・降雪直後・急激な気温上昇など
滑落:急斜面のトラバース、急斜面の(アイスバーン)滑降、
ルートを見失う:間違ったトレースを辿る。下りすぎ。天候の急変など。

事前にコースや天気情報(できるだけ直前のもの)をできる限り収集する。(ガイドブック・地図・インターネット・携帯電話を活用)
・ツアー山行報告:ちば山HP;山スキーの部屋2002年を参考のこと



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