ちばやま

ちば山の会2001年9月

千葉市中央区弁天町5番地鶴岡方

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北アルプス、ダイヤモンドコースを縦走して

立山室堂―五色ヶ原―スゴ乗越―薬師岳―黒部五郎岳―三俣蓮華岳―双六―新穂高温泉

日時:2001年7月19日(木)−7月23日(月)

7月19日(木)北アルプスの背骨!
 平年よりも10日近く関東甲信越地方は梅雨が明け、真夏の太陽が東日本以西を焦がしていた。じっとしているだけでも汗がにじみ出てくる。さて今日はいよいよ北アルプスの背骨ともとれる、屈指のロングコース、ダイヤモンドコースへの出発の日である。
 このコースは立山室堂を起点に薬師岳、黒部五郎岳、さらには三俣蓮華岳より裏銀座縦走路へとぶつかり新穂高温泉へ抜ける総延長50キロ近くもある歩き応え十分な縦走路である。途中オアシス的存在の五色ヶ原、太郎平より北ノ俣岳間に点在する池塘群に緑のじゅうたんにちりばめられた色とりどりの高山植物と見所も多い。
 3連休前夜の新宿の人の波をかき分けながら、新宿バスターミナルへ。凄い人ごみである。よくもまあ、こんな狭い場所にこんなにいるものだ、と感心させられる。このターミナルより立山方面、白馬方面、上高地方面、新穂高方面へ直通バスが出ている。寝ながらにして目的地につけるのは非常に有り難い。バスは立山行きで7台である。ぞろぞろと同じバスが似たような格好の人、似たような荷物を載せ、さながら中学校の修学旅行のようである。 新宿BT 22時30分出発。バスは定刻へ出発。練馬より関越道へ入っていった。仕事の疲れも手伝いすぐに眠りについた。

7月20日(金)晴れ  五色ヶ原
室堂7時00分到着。
室堂(7:45出発)−浄土山(8:50到着、9:00出発)−鬼岳(9:40到着、9:50出発)−獅子岳(10:25到着、10:45出発)−ザラ峠(11:20通過)−五色ヶ原キャンプ場(12:00到着)

 午前7時45分、室堂を出発。立山玉殿の湧水を2L入れて、ザックもフル装備となった。すぐに浄土山への登りとなり、ペースを掴むようにゆっくりと登る。浄土山山頂からは目の前に立山三山が迫り、南に目を向ければ、これから先進むべき黒部の山々を眺めることが出来る、と共に長い長い縦走の始まりを告げている。目の前に五色ヶ原、さらに大きな塊、薬師岳、そのとなりに小さく黒部五郎岳、その奥に笠ヶ岳が顔を覗かしている。
 ふと足元近くを見ると雷鳥の親子がヨチヨチと歩いている。人の気配に気づいたのかハイマツの中へ消えていった。
 竜王岳も肩から山腹を巻き、鬼岳を越えて獅子岳到着。目の前に五色ヶ原が迫る。五色ヶ原山荘の赤い屋根に緑と残雪の白、そして青い空と見事なコントラストを見せていた。そして五色ヶ原右手には立山カルデラの赤茶けた壁が迫る。獅子岳よりザラ峠へジグザグに落ちていく。名前が示すようにザラザラとした滑りやすい長い下りである。たどり着いたザラ峠は佐々成政の雪の立山越えで有名な峠である。近年佐々成政の越えた峠はここでは無いとの説が強いが、それはさて置き、歴史的一時のスポットを浴びた(今でもそうに違いないと信じたい)この峠は標識のみがひっそりと立っている。峠からは立山カルデラの火口壁を眺めながら緩やかに登り、五色ヶ原の一角に出る。高層湿原に敷かれた木道を歩き、キャンプ場へ。途中、色とりどりの高山植物が咲き乱れている。ハクサンイチゲ、チングルマ、一番驚いたのはハクサンコザクラのピンクの絨毯を見たことである。
 キャンプ場へは12時到着、昼ご飯を食べて、スゴまで行こうか迷ったが、ここ五色ヶ原へとどまることを決めたのは山荘を覗いてしまったことにある。覗くとすぐ目に飛び込んできた文字、生ビール、おまけに山荘の人に「生ビール、あ・る・よ!」と言われればこれは飲むしかない!生ビールに飛びつき、今日は五色ヶ原へ宿泊となった。
 午後は、ゆっくり高山植物鑑賞。
 テントを張りゆっくりのんびり暮れゆく北アルプスの空を眺めていた。はるか彼方には槍の穂先。まだまだ私の小指の第一関節よりも小さい。先は長い。

7月21日(土)曇り時々晴れ  五色ヶ原―薬師岳―薬師峠
五色ヶ原(5:30出発)―鳶山(6:10通過)−越中沢岳(7:20到着、7:35出発)−スゴの頭(8:30到着、8:40出発)―スゴ乗越小屋(9:40到着、10:15出発)−間山(11:10到着、11:15出発)−北薬師岳(12:40到着、12:45出発)−薬師岳(13:30到着、14:20出発)−薬師峠キャンプ場(15:30到着)

 今日は巨大な薬師岳越えの日である。早朝は低い雲が漂い遥か先の薬師岳の中腹以上はガスの中である。そんな中、鳶山より遥か彼方の赤く小さな山小屋、スゴ乗越小屋が見える。豆粒のように小さい。さらにこのコース、薬師越えのみを重視していたが、実はスゴ乗越小屋までがかなりきつい。それはアップダウンが多く、ペースが掴み難いことにあった。日が昇るにつれて、ガスも晴れて、越中沢岳からは見事な薬師岳がそびえていた。まるで壁のように立ちはだかっていた。
 ここからスゴ乗越小屋が大きく見えてはくるが、その先にそびえる薬師岳はまだまだ先である。花崗岩の砂礫道を下り、また登り返すとスゴの頭である。ここはからの風景は緑豊かな黒部の山々の間を黒部の急流が底をはっているように見える。ちっぽけな島国日本の中で何処となく大陸的な大自然の臭いがする。ここは何処となく合衆国シエラネバダ山脈の懐に広がるYOSEMITE NATIONAL PARKに似ている気がする。確かにEl CapitanやHalf Domeのような岩峰、Yosemite FallsやBridalveil Fallsのような滝も無いけれどもこの緑深い谷、Merced Riv.と氷河の侵食により出来たYosemite Valleyと黒部川と氷河の浸食により出来上がった黒部の谷。何処となく似ているし、この広大な大自然も負けてはいない。日本も凄いぞ!そんな気がする。
 その谷を眺めながらようやくスゴ乗越小屋へ。そこからひたすら登りが続く。今日のMain Dishである薬師岳への登りである。ひたすら何も考えず登る。夏の太陽が背中を焦がし、汗が吹き出す。それでもペースを崩さず、薬師岳の山頂へ。目の前に見事なまでの風景が広がる。赤牛岳、黒岳が目と同じ高さに、さらにその奥に裏銀座の山々、そして進行方向にはこれから進むべき黒部の緑深き山々が見渡せる。余裕もあるし、お隣さんは宴会しているし、(ここは居酒屋か?)とうとうザックの中から缶ビールが出てきてしまった。しばし、ビールで喉を潤しながら、この風景を満喫し薬師峠のキャンプ場へと向かった。キャンプ場はいっぱいであった。


7月22日(土)晴れのち雨  薬師峠―黒部五郎岳―双六小屋
薬師峠(5:55出発)−太郎平(6:15通過)−北ノ俣岳(8:05到着、8:15出発)−赤木岳(8:40到着、8:45出発)―中俣乗越(10:10通過)−黒部五郎岳(11:10到着、11:20出発)−黒部五郎小舎(13:00到着、13:10出発)−三俣蓮華岳(14:45到着、14:55出発)−双六小屋(16:30到着)

 すばらしい朝を迎えた。朝日が黒部の緑深き山々を照らしていた。薬師峠より太郎平さらに登りつめて北ノ俣岳に至る。所々池塘が点在し、また一面緑のじゅうたんに白いチングルマやハクサンイチゲが光る。このコース由来のダイヤモンドとはまさにこの事であろうか。しばし写真を撮るのに立ち止まってしまった。黄色の高山蝶もひらひらと舞っていた。槍の穂先も少しは大きく見えてきた。かなり距離を稼ぎ歩いてきたことが実感できる。
 さてここから赤木岳までは気持ちのよい稜線歩きである。左は赤木平、天然の庭園が広がり目を楽しませてくれる。中俣乗越までは下るがそこから急登であるが、薬師岳の登りから比べると大したことは無い。黒部五郎岳からは雲ノ平を見てその奥に黒岳がそびえている。振り返ると今日歩いてきた縦走路が見え、薬師岳へと続いていた。しかし、すぐにガスに覆われてきてしまった。
 カール内は清流とお花畑、羊岩群が調和する別天地だ。ランチタイムとなったが、ここでもザックの中からビールが出てきて、冷水で冷やすになった。冷たいビールが喉を潤していく。(ビールの分だけザックが今回重かった!)
 カール内を通過し、黒部五郎小舎へ。三俣山荘もしくは双六小屋のどちらへテントを張ろうか迷ったが、明日の工程を考えると双六の方がベターと判断、モチベーションも高いため双六小屋を目指した。三俣蓮華岳へ登り返し、山頂へ。すっかりガスの覆われてしまったが、ここで裏銀座への縦走路と合流。以前より歩きたいと願っていたダイヤモンドコースが終了した。これより雨も降り出し、巻き道で双六小屋へ。途中雷鳥の親子にも出会い、実はこのコースも高山植物が多く、両サイドにはハクサンイチゲやチングルマの大群落で今日の締めくくりとなった。小屋に着く頃には雨も上がり、鷲羽岳が目の前に現れる。
 小屋に着くなり、生ビールの文字。とりあえず、テントを張って考えることにした。小屋の人が「生ビール・あ・る・よ!」と声をかけてくれたが、とりあえず缶にした。それは「おでんも・あ・る・よ!!」この言葉につられてしまった。さらに「あ・る・よ!ワインも」この言葉に撃沈してしまった。とりあえず、最終日前夜だし、今日は20キロ近く歩いたことだし、まっ!いいかあと思い飲み干してしまった。
 そのままシュラフに沈んでいったしまった。



7月23日(土)晴れ  双六小屋―新穂高温泉(下山)
双六小屋(6:00出発)−鏡平小屋(7:20到着、7:40出発)−わさび平小屋(10:00到着、10:05出発)−新穂高温泉(11:05到着)

 日の出頃は天気も良く、鷲羽岳が輝いていたが、何処からとも無く低い雲が現れ、ガスに視界を遮られてしまった。さていよいよ最終日である。ひたすら長い下りが続く。ガスも鏡平で切れ、眩しい夏の太陽が戻ってきた。小屋では朝っぱらから名物カキ氷にかぶりついた。とりあえず、小屋の人にお勧めを聞いたがイチゴと言われそのとおりにした。テーブルで食べていると、前の人が練乳をかけてくれたため、イチゴミルクとなった。(チョットラッキー!)さすがに最終日になると自分で持ち込んだゴミも多くなり手にもっての下山となったが、登る人から見れば清掃ハイクをしてきたものと勘違いされつつも、北アルプス清掃登山も悪くないなっと思いながらの下山となった。長い長い小池新道を下りきり、林道歩きを強いられ、わさび平を経て順調に新穂高温泉へと下山。
 その後、新穂高、平湯と温泉のはしごを楽しみ、平湯温泉より新宿行きの特急バスへと乗り込んだ。19時新宿着。参議院選の街頭演説の真っ只中に下ろされたため、一般市民の注目を一瞬浴びたのは言うまでもない。
 北アルプス屈指のロングコースであり、緑深き黒部の山々、可憐な高山植物を愛でる楽しくも有り、苦しくもあった(コース長すぎ!)山行でした。


                          森 隆浩(単独)

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