ちばやま

ちば山の会2002年8月

千葉市中央区弁天町5番地鶴岡方

Tel%Fax 043-255-9821



飯豊:石転び沢雪渓・北俣岳 山行報告

2002年6月9日(日)日帰り
メンバー 橋本(CL),渡辺浩之(SL),三輪,菊池,舟山,上茂,柴田,澤田,広木(愛),竹下,白石

6月29日::晴れ

 世界中を湧き上がらせたFIFAワールドカップも明日のブラジル・ドイツの決勝を残すのみとなっていた。今日はいよいよ白馬、針の木と並び数えられる三大雪渓のひとつ、憧れの飯豊・石転び雪渓に挑戦する日である。雪渓上部の急斜面の滑落や落石の危険性に不安を抱き、天気の崩れを心配していたが、素晴らしい好天の下、頼もしいちば山の健脚仲間に囲まれ、ルンルン気分で出発した。

標高400m余りの駐車場から温身平を経て林道を暫く行くと、梅花皮沢に沿った登山道(450m)にでるが、ここで始めて雪渓が遠望できた。この辺はブナの大木が素晴らしく、デジカメを撮りながら最後尾からゆっくりついていった。1時間半ほど経過し雪渓の取り付き(700m前後)にでた。夏特有の大きなスプーンカット状の硬い雪渓は黒々とした枝と砂礫で汚れており、山スキーにはしんどい状態であり負け惜しみではあるがホッとした。石転び沢出会(870m)までは、正面に門内岳からカール状に落ち込んでいる門内沢の雪渓を望む比較的傾斜の緩い広い雪渓であり、出会には8:35に到着。軽量化に成功し素晴らしく健脚の美穂ちゃん・会長、同年令で日頃テニスで鍛えている橋本さん、そして羨ましいほど健脚な竹下さんあたりが、一行をリードしてくれた。

出会いで向かって右の門内沢雪渓と左の石転び雪渓に分かれる。ここで登山者とはいいがたい軽装でスパイクのついた長靴のいでたちで山菜取りに入っていた中年に声をかけられた。越後屋(民宿兼そば屋)のオヤジで石転び核心部のルートを教えてくれ、最後に忍ばせていた最新鋭の一眼レフデジカメを取り出し写真を撮ってくれた。

出会いを過ぎると勾配はきつくなり、徐々に全員がアイゼン登行に切り替えた。雪渓上部に行くほどスプーンカット状の凹凸は小さくなったが、替わりに古いデブリの細かい凹凸が目立った。

1400m付近で中休憩。次第にきつくなった傾斜角を予想し25度くらいかななどと話し合っていたら、突然ザックに身をまかせ仰向けになり上部の半円筒状景色(凹状の雪渓と稜線の青空からできる景色がこのように見える)を楽しんでいた竹下さん曰く『そんなにないわよ、15度くらいじゃない』。どうみても25度前後の傾斜なのにどうして??あお向けになっていて何か違う角度を測定しているのかなと思ったら、なんと気温のことであった。一同大笑い!! 雪質は硬くも軟らかくもなくステップを刻みやすく、更に急な雪渓を一歩一歩高度を稼いだが、草付きにつく頃には一同かなりバテバテの状態で最後の休憩となった。この頃には、炎天下で気温もかなり上昇、風のない草付の登りは、30度以上の急勾配と草いきれで我慢のしどころであった。

草付を終わると、いよいよ本日の核心部。35度強の雪渓を10メートル余りトラバースするのである。しっかりステップが確保されており、問題のない雪質であったがやや緊張し無事通過した。(30mほど下にはかなり大きな岩があり、滑落したら大怪我になる可能性もあり状況によってはかなり厳しい)。数十メートルの登山道を登り、更に最後の数十メートルの雪渓を喘ぎ喘ぎ登ると、そこは標高1857mの梅花皮小屋であった(12:20)。

標高差1400m、雪渓だけでも1100mの標高差は夏山の雪渓としては日本一ではなかろうか。しばし征服した満足感に浸りながら、ボーっと大雪渓を眺めていた。(暫くして北俣岳頂上付近より雪渓のかなり下方まで猛スピードで落ちていく落石がみられたということである。)

疲労感から小屋で早速宴会をと、なかば軟弱派に傾いたが、管理人の『一人1500円です』に一変、ビール飲みたさに、そそくさとテントを張った。13:30早くも宴会開始。大量のビールに多数の豪勢な料理、梅雨の晴間のすがすがしい陽光、楽しいお喋り、すっかり酔いが回り、テントのなかで昼寝をしてしまった。健気な方々は烏帽子岳(2017m)までピストンしヒメサユリなどの高山植物を観賞、飯豊本山方面の景色を楽しんだ。疲労とアルコールが手伝って7時頃までには極めて早い就寝となった。

6月30日:晴れ

3:00起床、下り坂が予想された天気は予想に反し晴れ、夜明け前からご来光直後までの素晴らしさをデジカメに納め、4:30出発。暁に照らされた北俣岳の急登では、他では見られない小ぶりで可憐な飯豊ウスユキソウなどの高山植物を楽しみ、雲海と石転び雪渓・山並みの織り成すモノトーンな幻想的景色を眺めながら、ゆっくり噛みしめながら登った。5:00,標高2025mの北俣岳頂上、今回の最高点である。しばし周囲の飯豊連山の景色を堪能した。

北俣岳から門内岳(1887m)を経て地神北峰(1780m)まではアップダウンはあるものの快適な稜線漫歩である。門内岳稜線からカール状の大きな雪渓を右下方に眺めながら、来年こそはと石転び沢・門内沢の山スキーを実現すべく偵察をしながら雪渓の状況をデジカメに収めた。

当初、梶川尾根を下る予定であったがあまりにも急下降であり、地神北峰からの丸森尾根のほうが楽であり、時間的にも短いという情報を例の越後屋のオヤジから得ていたためこれに従った。上部には雪渓が少しルート上に残っており、ややトラバース気味の部分ではスリップしないよう慎重に下った。かなりの標高差の下降、炎天下の暑さなどにより、疲労度はうなぎ登り、大腿四頭筋への負担が益々感じられ、水分・塩分補給と休憩に気を配った。

残すところ標高差で200mほどになった岩場の急下降地点で広木さんの奇声。浮石に足を取られ右方向にずり落ちた瞬間、後ろの美穂ちゃんがザックを放り投げ、広木さんに手助けし事なきを得たが、ザックは左の林に囲まれた沢状の急斜面を落ちていった。美穂ちゃんは探しながら、かなり下まで下ったが見つからない。会長がザイルを携え応援、さらに三輪さんも偵察、暫く探したが見つからず取り合えず登ってきたが、幸いにもかなり上の茂みに隠れているのを見つけることができた。

12:00頃全員無事に登山口駐車場に到着。バテバテの身体を飯豊山荘の温泉で洗い流した。帰路梅花皮山荘近辺にある越後屋に立ち寄り、2L版にパソコン印刷した写真を全員が戴き、美味しいオソバと山菜、ビールを召し上がり、一路ワールドカップの決勝に間に合うことを願いつつ関越道をぶっ飛ばした。


                         菊池(記)

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