ちばやま

ちば山の会2004年07月

千葉市中央区弁天町5番地鶴岡方

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「私の一名山」   その10<白神岳>


 4月下旬の新緑の頃、前から憧れていた世界遺産に登録されているブナの原生林、白神山地の白神岳に登るチャンスが訪れました。黒崎登山口から入山し十二湖に下山する縦走コースで、入下山口に一台ずつ車を置き登山を開始する。新緑の雑木林の中を登り始め、マテ山を過ぎる辺りから残雪が出始め、新緑のブナ林の中の急登を登って行く。

 大峰分岐に出ると貴婦人のような姿をした津軽富士(岩木山)が出迎えてくれた。白神岳山頂からは八甲田連峰、岩手山、八幡平など東北の雄大な山々の展望が楽しめ、頂上直下の日本海の見える特等席にテントを張り、日本海に夕日が沈むのをまだかまだかとお酒を飲みながら、おしゃべりをしながら、また昼寝をしながら待ち続ける。

 シーンと静まり返った山の頂きから、徐々に赤く染まり始まる日本海を眺める。真っ赤な大きな太陽がゆっくりゆっくりと地平線に沈んでいく姿を、瞬きもせずにジーッと見続ける。迫力満点な落日!!こんなに素晴らしい感動的なシーンを見たのは初めてのことだったので興奮気味!思わずため息がでてしまう。太陽が沈んだ後、今度は西空一面が茜色に染まり、そして闇に包まれていく。漁火を点し始めた舟が静かに浮かんでいる。なんと神秘的な光景だろう?しばし呆然と立ち尽くす。

 感動も覚めやらぬうちに東の空を見上げると、なんと今度はやさしい姿をしたお月様が私達を照らしている。雪の上に自分のシルエットがくっきりと映し出される様子は随分久ぶりに見たようで懐かしさを感じる。そして『青森天の川』とでも言おうか薄い雲でできた道が頭上に現れる。星座が分らぬほど空一面に散りばめられた星達もより一層輝いている。大自然の山中での神秘的な出来事にうっとりと酔いしれ、なんとも言いようのないロマンチックな長い夜を過ごしたのでした。

 二日目、十二湖に向けて縦走開始早々にヤブコギが始まる。登山道は標識もなく、赤布が所々あるだけで歩かれた形跡は全くなく、地形図を出し確認しながら縦走路を探し出す。戻る勇気も!なんて声もしたが誰も振り向こうともせずにひたすらブナの林の中を進んで行く。素晴らしいブナの林を見てほしいと!ブナの林が私達を呼んでいたのだろう。白神の主と呼ぶに相応しい立派な大木が勢ぞろいし、見渡す限りの山、やま、ヤマ、一面が真っ白い残雪とブナの新緑に覆われている。さすがの世界遺産のブナの原生林に圧倒される。長い縦走も大崩山からの十二湖展望で終盤に差し掛かり、桜の花の咲く十二湖で一服お茶を頂き、幻の魚『いとう』を見て、日本海の荒波を眺めながら不老不死温泉の露天風呂にゆっくりと浸かり、山の疲れを癒すことが出来ました。

 山頂から日本海に沈む夕日の素晴らしさに感動し、ロマンチックな月夜の晩を体験できたこと。またこの時期に登ったからこそ残雪とブナの新緑とのダイナミックな鮮やかさを味わうことができました。白神岳は私にとっていつまでも忘れられない一名山となりました。

 今度はブナの黄葉と日本海に沈む夕日を見にもう一度白神山地を訪れたいと思っています。

 8月号の『私の一名山』は田中さんにお願いします。お楽しみに!!


                         竹下(記)

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