富士山須走口山スキー報告2007年5月12日(土)

山域  富士山
場所  富士山須走口山スキー
メンバー  CL菊池、鶴田、岡田、長池
天気    晴れ
コース   16:30須走口駐車場→7:25雪面末端→10:20 3,000m→13:30山頂13:40→15:30駐車場

快晴、暖かい春の陽がそそぐ。川口湖料金所から仰ぐ富士山は、山裾を柔らかい新緑で包まれ白銀の大きな山肌が真っ青な空に突き上げている。こんな富士の清々しい姿を見るのは初めてのような気がして、車から降りてシャターを押しまくる。

 須走登山道を登っていくと松並木の梢の間から、ますます大きく白い山腹が迫ってきた。  古御岳神社そばの駐車場に車を入れる。閑散として車は数台のみ、晴れやかな空のもと、待望の須走り滑降の静かな幕開けである。


 板を背負い、火山灰の台地に上がってゆっくりと歩を進める。振り返ると川口湖の光る湖面や箱根連山がうっすらと漂う霞みの底に広がっていて、思わず下手な1句が口をついて出る。続いて1句、また1句。あまりの好天気に心が浮き立ってくるようだ。

 潅木がようやく尽きるころ雪面が現われた。下雪は硬く、ここでアイゼンを着ける。



 最初は、緩やかに伸びる雪原をまっすぐに山頂へ向かっていく。もう既に先行する2人の人影が山腹に飲み込まれるように小さく見えている。やがて傾斜が増し、大きくジグを切って登っていくようになるが、所々硬い雪面が現われたりもする。3,000mを越えると山頂の岩隗がごく近くに見えてくるが、富士の大きな山腹はそう易々と寄せてはくれない。次第に息も荒くなってきた。さらに傾斜が増すとアイゼンの爪がフラットに置けなくなってきて、キックを加えて踏み込んでいく。穏やかだった風も高度が増すにつれ強く感じられるようになった。

 登高の時限を13:30と決め、鶴田・菊池は山頂下200mで滑降開始点とし、岡田・長池はさらに前進する。さすがに頂稜直下は雪面が硬い。アイゼンの先端ピックを蹴り込む登りとなり、ハーハー息を弾ませながらようやく頂稜に達した。

 大きな噴火口の対岸に昨年行った剣が峰の黒い岩隗が見え、稜線を登る登山者の列が小さく見えている。富士宮口は結構賑わっているようだ。右手の稜線に吉田口到達点の鳥居が小さく立っている。風が強い、ゆっくりとはしていられない。板を履いてビンディングを締め込む。

 さあ、滑降だ。

 ドロップポイントに立つと、岩稜に挟まれた狭い急な硬い雪面から、遥か下方の火山灰平原に、弛みのない広大な白い雪面が一直線に伸びている。緊張が高まる。最初の1ターン、身震いを感じる一瞬だ。カリッと硬い地氷の上に乗った薄いザラメを、エッジが切るシャーという音が響く。行ける、大丈夫だ。10ターンほどして停止し後続の様子を確認する。ハーハーと呼気が荒い。続いて岡田氏、ショートターンでガンガンと降りてくる。同じく停止し、荒い息を吐いている。そーれ行くきゃない。"キャッホー"と蛮声が出る。登ってくる若い3人のパーティーに頂部の様子を聞かれる。"大丈夫、大丈夫。雪は柔いよっ!"

 先行していた鶴田・菊池の両氏と合流。それぞれに思い思いのコースを選んでノートラックの白い雪面を切り裂いていく。写真撮影を混じえながらグングン降りていく。もう随分降りたと思って高度計を覗いてみると、何とまだ3,000mの上にいる。雪面が大きすぎるのと、傾斜と視線の関係で足下の斜面が短く見えるのだ。山頂を見やると太陽を背に輝く雪面が神々しいばかり。"何てすばらしいんだ"異口同音である。

 ちょっと滑り疲れた。小休止。初体験のこの須走りの斜面に感嘆の声があがる。昨年、富士宮ルートの大感動を忘れたわけではないが、この広大な高度差1,800mに及ぶ斜面はそれを上回る感動があって余り有る。やはり、日本一の富士、スケールの大きさは半端ではない。

 昨年はガスの中で視界を失ったなかを滑ったが、今日は遮るもののない透明な眺望のなかにあるせいかもしれない。  さらに下降を続ける。

 傾斜が緩んで、スキー技術の展覧だ。鶴田さんに声がかかる"ストック、前へ""随分上達したよ"。菊池さん、するするとみごとに回っていく。"回りすぎじゃないかい!"。岡田さん、ガシガシとダイナミックにウエーデルンを決める。

 ようやく火山灰台地に降り来たった。根曲がりの低潅木の間の残雪を拾って、くねくねと露出した夏道の末端で板を脱ぐ。後続の若い3人パーティーも到着して板の話や平均年齢に花が咲く。20台であろう格好良い若手がまぶしい。写真を取り合ってグッドバイだ。

 火山灰で真っ黒に煤けた靴を脱いで、高い頂きが遅い午後の陽で柔く輝いている富士を振り仰ぐ。それぞれの視線が語る。"うーん、なかなかたいしたもんじゃないか!"

 帰路、川口湖にほど近い日帰り湯「紅富士」に立ち寄る。大きな施設で大賑わい、盛況である。広い庭園に露天風呂が2船。内湯から樹海越しに、夕霞みに雪面が淡い大きな山体がどんっと見える。もう一度、満足感を満たして富士山須走口を後にした



                                                     (長池 記)

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2007年 千葉県勤労者山岳連盟 ちば山の会 
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